イベント運営の議事録・タスク管理をAIツールで効率化する実践ガイド
「会議が終わったあとの議事録まとめと、担当者への連絡が地味にキツい」——イベント制作の現場でよく聞く声です。打ち合わせ自体は1時間でも、議事録の清書・タスクの洗い出し・各担当者へのメッセージ送信まで含めると、会議1回につき1〜2時間が消えていく。プロジェクトが複数走れば、週に数時間がこれだけで飛びます。
この記事では、文字起こしAIとタスク管理ツールを組み合わせて、その「会議後の作業」を大幅に削る具体的なフローを紹介します。ただし、「導入すれば全部うまくいく」という話はしません。実際に現場で起きやすい失敗パターンを先に整理したうえで、回避策として実用的な手順を示します。
なぜイベント会社の議事録・タスク管理は手間がかかるのか

一般的なオフィス業務と比べて、イベント制作の打ち合わせには特有の難しさがあります。
- 関係者が多い(制作・会場・音響・映像・クライアント・外部スタッフ)
- 「仮決め」が多く、同じ項目が複数回の会議に渡って変化し続ける
- タスクの担当者と期日が会議のたびに更新される
- 議事録の受け取り手によって必要な情報粒度が異なる(クライアント向け・社内向け・外注向け)
この構造上、「会話をそのまま文字にするだけ」では議事録として機能しません。ここを理解せずにAIツールを導入すると、後述する失敗が起きます。
よくある失敗パターンと、その回避策

失敗①:文字起こしの精度を過信して、確認なしで共有してしまう
文字起こしAIは確かに精度が上がっています。ただし、イベント現場で頻出する「会場名」「機材名」「人名」の固有名詞は誤変換が起きやすい。たとえば「リハーサル」が「離婚サール」になるような珍事は今でも起こります(笑えない話ですが)。
回避策:文字起こし後に必ず5分間の「固有名詞チェック」を設ける。事前にツール側の辞書登録機能を使って、イベント名・会場名・主要スタッフ名を登録しておくとミスが大幅に減ります。Notta・Trint・Notionの文字起こし連携などは辞書登録に対応しています。
失敗②:文字起こしをそのままタスクに変換しようとする
「AIに議事録を要約させて、タスクも自動で抽出させれば楽になる」と考えがちです。実際にやってみると、AIが拾うタスクは「〇〇を確認する」「〇〇について検討する」という粒度の粗いものが多く、そのままAsanaやNotionに流し込んでも担当者が「何をどこまでやればいいかわからない」状態になります。
回避策:タスクの抽出だけAIに任せ、「担当者・期日・完了条件」の3点は人間が追記するルールにする。AIは「作業候補のリスト」を出す役割、最終的なタスク設計は担当者が行う、という分業を明確にしましょう。
失敗③:ツールが増えすぎてチームに浸透しない
文字起こしにA、要約にB、タスク管理にC、共有にD……と複数ツールを組み合わせると、慣れた担当者にしか使えなくなります。特に現場スタッフや外注先は、新しいツールへの抵抗感が想像以上に強い。結果、「結局リーダーが全部やる」という属人化に逆戻りします。
回避策:起点となるツールを1つに絞り、そこから連携を広げる。最初から「完璧なフロー」を目指さず、「まず議事録だけ自動化」→「慣れたらタスク連携を追加」という順序で展開するほうが定着しやすい。
小規模チームでも動く、実践的なフロー設計

ステップ1:会議の録音・文字起こし(コスト:無料〜月2,000円程度)
対面・オンライン問わず使いやすいのは以下の組み合わせです。
- オンライン会議(Zoom・Teams等):Notta(月4,000円以下のプランで文字起こし+要約)またはOtter.ai(英語環境が多いが日英混在打ち合わせに強い)
- 対面打ち合わせ:スマートフォンの録音アプリ+Notta、あるいはGoogle Meetの文字起こし機能(無料)
予算をかけたくない段階であれば、Googleドキュメントの音声入力(無料)で文字起こしだけ行い、要約はChatGPTに貼り付けて処理する方法でも十分機能します。
ステップ2:AIによる議事録の構造化(使用:ChatGPT / Claude等)
文字起こしテキストをChatGPTやClaudeに貼り付けて、以下のようなプロンプトで整形します。
「以下はイベント制作の打ち合わせ記録です。①決定事項、②未決事項・保留項目、③次回までのアクションアイテム(担当者名を含む)の3項目に分けて整理してください。また、クライアントへの共有版と社内確認版の2バージョンを作成してください。」
この「クライアント向け/社内向け2バージョン出力」が地味に効きます。一から書き分ける手間が、プロンプト1つで解消されます。
ステップ3:タスクのNotionまたはTrelloへの転記
AIが出力したアクションアイテムを、NotionのタスクDBまたはTrelloのカードに転記します。このとき重要なのが「完了条件の明記」です。
- NG:「会場担当に連絡する」
- OK:「会場担当の田中さんに搬入時間の確定連絡をして、返答をNotionに記録する(期日:〇月〇日17時)」
AIが出力した段階では前者の粒度が多いので、転記時に後者の形に整えるのが担当者の役割です。慣れてくると、プロンプトの段階で「担当者・期日・完了条件を含めてタスクを出してください」と指定することで、修正量が減ります。
ステップ4:担当者への連絡を半自動化
タスクが確定したら、Notionの担当者メンション機能やTrelloのメール通知を使って連絡を自動化できます。さらに踏み込む場合は、NotionとSlackをZapierで連携させると「Notionにタスクが追加された瞬間にSlackの担当者DM通知が飛ぶ」フローが作れます。Zapierの無料プランでも月100タスクまでは動くため、小規模チームなら費用ゼロで試せます。
このフローが「向かないケース」も正直に書いておきます

このフローには前提条件があります。
- 会議中の発言が録音・録画できる(クライアントが録音を嫌がるケースは別途対応が必要)
- チームがNotionやTrelloなどのツールに慣れるまで最低2〜3週間の習熟期間がある
- AIの出力を最終確認する人間が必ず1人いる(ノーチェックで共有するのはリスクが高い)
また、情報管理の観点では注意が必要です。ChatGPTやClaudeに議事録を貼り付ける際、クライアント名や個人情報が含まれる場合は、APIプラン(学習に使われないプラン)を使うか、社内情報の取り扱いポリシーを事前に確認してください。無料プランのChatGPTは入力内容がモデル改善に使われる可能性があります。
まとめ:ツールより「どの作業を任せるか」が先
文字起こしAIとタスク管理ツールの組み合わせで、会議後の作業時間を1〜2時間から15〜20分程度に縮めることは現実的に可能です。ただし、それはツールを入れれば自動的に起きることではなく、「どこまでAIに任せて、どこから人間がやるか」の設計が先にあってこそです。
最初の一歩としておすすめするのは、次回の社内打ち合わせをGoogleドキュメントの音声入力で文字起こしし、その内容をChatGPTで整形してみることです。費用はゼロ、所要時間は30分以内。それだけで「自分たちの打ち合わせに使えるか」の感触がつかめます。その感触をもとに、ツールとフローを少しずつ本格化させていくのが、現場に無理のない進め方です。
「自社のケースではどの部分から手をつければいいか」「どのツールが合っているか」について、具体的に整理したい方は、以下からお気軽にご相談ください。初回は無料でお話しできます。

